
なんか怖いし、皆混乱してるし、
ツッコみどころ多すぎひん…?

確かに異様な光景よね。目のやり場に困るし。
戸惑いも感じる絵ですが、実はこれ、「自由」という概念を初めて人間の姿に投影させた絵なんです。
「理性」「秩序」が重視された時代に情熱を絵に投影させたドラクロワ。
この記事では、この絵のすごいところと、現代の私たちがそこから学べる心の自由について解説します。
読み終えるころには、この絵の混乱が私たちの道しるべとなることに気づくはずです。

💡ざっくり一言でいうと…
感情で描く革命児
理性と秩序を重んじた新古典主義を打ち破り、情熱で伝統を塗り替えたロマン主義の旗手。

あと、日記魔。

日記魔…?

ドラクロワは約40年にわたって日記を書いていたの。
そこにはあの作曲家ショパンとの交流も記されてる。
日記の中ではドラクロワはこの絵を描いたとは思えないほど、別人なのよ。
ドラクロワの日記 : 1822‑1850(国立国会図書館デジタルコレクション)からネットで閲覧できます。
何がすごい?3つのポイント
①革命を「美しく」描いた勇気
この絵の舞台は1830年フランス。七月革命が起こったときです。
七月革命
王様シャルル10世の弾圧に耐えられなかった市民や学生が反発
パリで三日間にわたって暴動が発生した結果、王は退位

1789年のフランス革命ほど大きくはなかったけど、
パリの街が暴動の場になって混乱したのは間違いないわ。
この時、パリの街は混乱と流血に包まれていました。
新古典主義が主流だった当時の画家なら、暴動や流血をそのまま描いて「リアル」に見せるのが正解。
でもドラクロワは、そうはしませんでした。
希望の概念=「自由」を女神として象徴的に表現したのです。
②色で感情を叫んだ
当時、正確かつ綺麗な線で絵を描くことが当たり前とされていました。
新古典主義の代表作の一つを見てみましょう。

こちらも当時の主流、新古典主義とは違うスタイルをとったということなの。

1. 細部まで丁寧できっちりとした描写
2. 歴史上の人物名を絵に入れ込む演出
ダヴィッドはナポレオンを歴史的・英雄的な人物として描くために、
岩や山に歴代の軍事的英雄の名前を彫り込みました。
- Hannibal(ハンニバル) :古代カルタゴの将軍、アルプス越えで有名
- Karolus Magnus(カール大王) :中世のフランス皇帝

これは単なる装飾とか、もの寂しいから入れてみた、ってわけじゃなくて、
ナポレオンの権威やストーリー性を強めるために書かれたと言われているの。
「ナポレオンって、こんなにすごいんだぞ!!!」と言わんばかりにね。
3. 凛とした姿勢
ちなみに実際のナポレオンのアルプス越えはというと…
雨風の中でロバに乗ってぐったり。
でも、ダヴィッドは「神話的真実」を優先。ナポレオンを「理想化された英雄」として描いた。
一方ドラクロワは、筆の跡や色の滲みを使い、色そのもので感情や動きを表現しました。
描かれた人物たちは、線で囲まれるのではなく、光と影の“うねり”の中で生きています。

ウジェーヌ・ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』

確かに色と光が輪郭を作っとるし、
全体的になんとなく揺らいで見えるな…。

実はこの光と色で表現する技法が後の印象派に影響を与えたの。
印象派には父と呼ばれるマネがいたけど、
ドラクロワはおじいちゃんみたいな存在かもね。
③理想と現実を同時に描いた構図
絵の中では、自由の女神が旗を掲げ、人々を導くように前へ進んでいます。
その後ろには、貴族風の男、市民、少年。
身分のちがう人たちが一緒に進んで、まるで「みんなで自由をつかむんだ!」という理想の姿。
でも、視線を少し下に向けると、足元には倒れた兵士や市民たち。
自由のために命を落とした人々の姿が描かれています。

ドラクロワは自由って、誰かの犠牲の上にあるって言ってるのかもしれんな。

自由の美しさだけじゃなく、その裏の痛みや代償をも描いたのね。
この絵が伝えるメッセージ
この作品は単なる七月革命の混乱を描いた「記録絵図」ではなく、普遍的なメッセージが込められています。
自由は様々な社会階層の人物が混在し、皆同じ方向を向き、犠牲になり得られたもの。
誰もが自由を求めるけれど、その道は綺麗ではなく泥だらけだったこと。
そして混乱の中でも女神=自分の信じる光を掲げる人の姿を、彼自身の独特の描き方で捉えました。
ドラクロワは、身分に関わらず自由に挑んだ民衆の勇気を讃え、そこには犠牲があったことを忘れてはならない。そんなメッセージを込めていたように感じられます。

七月革命の悲惨さと希望は概念としては相反するかもしれないけど、
同時に描くことに意味がある、そこにドラクロワは情熱を込めたのね。
ドラクロワは彼の日記にこう記しています。
They say that truth is naked. I cannot admit this for any but abstract truths; in the arts, all truths are produced by methods which show the hand of the artist.
ー人は『真実はありのまま裸である』と言うけれど、抽象的な真実以外にはそれを認められない。
芸術におけるあらゆる真実は、画家自身の手の痕跡を通してこそ表されるものだ。

どういうことや…

芸術では画家自身が表現してこそ、真実が伝わるということだと思うわ。
写真みたいにそっくり写すだけじゃ、心は動かない。
筆の一振りに画家の思いがのるからこそ、絵は語りかけてくる、そういうことかもしれないわね。
ちょこっとガイド
国立ウジェーヌ・ドラクロワ美術館
ドラクロワの家は、現在ドラクロワ美術館として公開されています。
小さいけれど、まるで19世紀の時間が止まっているように感じられるこの場所は、ドラクロワ好きにはたまらない「聖地」でしょう。
ルーブル美術館の分館なので、ルーヴル美術館公式サイトからチケット購入できます。
※2025年現在:1,400〜1,600円(為替によって変動するため、公式サイトを確認してください)
ロマン主義
頭でっかち、理性第一の新古典主義に反発。
絵も詩も音楽も、ルール通りに動くな、自由に!がモットー。
自分の目で見た世界・自分の心で感じた世界を描く自由奔放な主義。

新古典主義が学級委員長なら、ロマン主義はクラスの人気者って感じかしら。
本記事内の作品画像はすべて Wikimedia Commons または Wikipedia より引用。Public Domain に属します。

